家族や身近な皆さまに知っておいていただきたいこと

双極性障害治療の主人公である本人が知っておくべきことについてまとめました。

双極性障害は患者さんにとってつらい病気であるだけでなく、家族や身近にいる人たちにとってもつらい病気です。激しい躁状態はもとより、うつ状態で暗くふさぎ込んだ家族を見守り続ける、ということも大きな負担になるでしょう。
でも、この病気には、再発を防ぐための薬や対策がいくつもありますから心配はいりません。ただし、再発を防ぐためには、周囲のサポートが大切です。ここでは、患者さんが治療と予防を継続していくうえで、家族や身近な皆さまに知っておいていただきたいことをまとめました。

監修:加藤忠史 先生
理化学研究所脳科学総合研究センター
精神疾患動態研究チーム チームリーダー

1.患者さんとご家族の認識の違い

双極性障害の30〜50%の期間はうつ状態です。

家族は、患者さんの躁状態は手に負えないから、静かなうつ状態のほうが好ましいと考えがちです。一方、患者さんにとってうつ状態は病気の期間の3割~5割を占めるほど長く、大変つらいものですが、躁状態は力がみなぎって調子がいいと感じるので軽視しがちです。
このような認識の違いがあると、それが家庭内にストレスを生み、病気の再発を誘発してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
そうならないためにも、あらかじめよく話し合って、こうした認識の違いがあることを理解しておくとよいでしょう。

2.大切な家族を守るために

再発の徴候を見逃さない!

再発の際にどのような症状が最初に出てくるかは人によって異なります。
これまで躁状態になったときの様子を振り返ってみて、最初にどんな症状が出るか、どのようなストレスが再発を引き起こしやすいか、患者さんとご家族でよく話し合っておきましょう。
躁状態には患者さん自身には病気だという認識がない場合があります。そのため、家族の様子が変だと気づいた場合や再発の兆しがみられた場合、すぐに主治医に相談することが大切です。

自殺のサインを見逃さない!

残念ながら、双極性障害の患者さんで自殺により亡くなってしまう方は少なくありません。
自殺は自らの意思で死を選ぶものと、考える方もいますが、双極性障害で自殺したくなるのは、病気の症状にほかなりません。
自殺の前には下記のようなさまざまなサインがみられることがあります。心当たりがある場合には、すぐに主治医に相談して予防しましょう。

自殺のサイン

「死にたい」「消えてしまいたい」「遠くへ行きたい」

自殺の準備をする、遺書を書く

周囲の人に別れやお礼を告げ、大切なものを渡す

身の回りのものを整理する

向こう見ずな行動をとる

無茶な飲酒

自殺の危険を高める因子

自殺未遂をしたことがある

身近な人を自殺で亡くした

最近の近親者の死

最近の有名人や知人の自殺

経済的損失

本人を支える家族や友人がいない

3.生活リズムを乱さないよう協力してください

再発を防ぐためには規則正しい生活リズムを維持することが大切です。
とくに気を付けたいのは徹夜です。たった一晩の徹夜でも躁転してしまう場合がありますので避けたほうがよいでしょう。また、旅行は生活リズムが乱れがちになりますので、注意が必要です。時差をともなう海外旅行などは主治医に相談してみましょう。
毎日、規則正しい生活が送れるように同居する家族や職場・学校の方の協力も大変重要です。

4.状態別 患者さんとの接し方ガイド

躁状態

とくに、激しい躁状態を伴う双極Ⅰ型の場合、はじめての躁状態に接した家族や周囲の人は、「あの人がこんな言動をするなんて、人が変わってしまった」と大きな驚きと戸惑いを覚えることでしょう。
躁状態の患者さんの言動は、あくまでも病気によるものであり、本来のその人の性格によるものではないことを忘れないでください。感情的にならずに、受診を促すことが大切です。
また、躁状態には普段は考えられないような浪費、たとえば、突然、車や高価な着物を購入したり、高額のローン契約をしてしまったりすることもあります。契約書が交付されてからでも契約を無効(クーリングオフ)にできる場合がありますので、なるべく早く消費生活センターなどに相談してみましょう。
躁状態では、本人には病気という自覚はなく、むしろ今の自分こそが本当の自分だと思っていることがあります。本人に病識がない状態で受診してもらうのは困難です。まずは、「このところまったく寝ていないから疲れが溜まって身体が心配だ」のように、精神の問題よりも身体を問題にして病院を受診させるとよいでしょう。
その際には、患者さんが最も信頼している目上の人から「病院にいってみるように」と指示してもらうと従ってくれることがあり、試してみる価値があります。
ただし、患者さんをだまして病院に連れていくことは、決してやってはいけません。躁状態でもそのときのことは覚えていますから、その後の家族関係にしこりを残すことになります。患者さんが入院を拒否しても、「病気を治すために入院してください」と本人にいっておけば、そのときは納得してくれなくても病状が落ち着いた後、きっと理解してくれるでしょう。
入院を拒絶し、症状の悪化と暴力行為がみられるようになった場合には、警察に相談することも考えましょう。

うつ状態

周りの方へのお願い

うつ状態のときにはできるだけ休養をとることが必要です。
うつ状態には、気分が落ち込む、やる気が出ない、外出できない、罪責感、眠れない(逆に過眠になる場合もあります)、食欲不振などの症状が出て動くことができず、患者さんにとってはとても苦しい時期だということを理解してください。
うつ状態のときには体を動かすことも患者さんにとっては大変つらいことなのです。仕事や家事が思うようにできないことについて理解して、サポートしてください。
躁状態のときの言動などについて責めないで、できるだけそっとしておいてあげてください。
躁状態でやってしまった失敗を一番後悔して苦しんでいるのはうつ状態のときの患者さん本人なのですから。
双極性障害は脳の病気です。糖尿病治療に服薬が欠かせないように、双極性障害の治療のためには服薬の継続がもっとも大切です。忘れずに服薬できるよう、サポートしてあげてください。
「頑張れ」や「いつごろ治るの?」という言葉は、動くこともつらいうつ状態の患者さんを焦らせ、苦しめてしまいます。あたたかく見守ってください。