ここちいい生き方がある

社団法人『やどかりの里』(埼玉県さいたま市)

5.「YOU遊」(小規模作業所)・浦和生活支援センター(地域生活支援センター)

きれいなビーズアクセサリーや個性豊かな工芸品の数々に、思わず立ち止まりたくなる雑貨屋さんです。
もとは「やどかりの里」の作業所で作られた製品を販売する場所としてオープン。
現在は外部も含めて50箇所もの仕入先をもつまでになりました。

接客も仕入れもメンバー・職員が協働で行い、店長もメンバーが務めています。
開店後2年半、メンバーからは早くも「2号店を作ろう!」と威勢のいい声も上がっています。

斉藤志津子さん

夢がかなってきたと思います。

「You遊」の会計を一手に引き受けている斉藤さん。
以前、別の作業所も利用しましたが、仕事がきつくて続けられず、薬の副作用で外出もままならないまま、5年間ほど家のなかで過ごしていました。
「1人で家にいた時は周囲に心を開くことができなかったので、友達がほしいなと思って来ました。」
開店したての「You遊」と出会った斉藤さん。開店して1年間の店の成長に充実感をかみしめています。
「助けてくれる友達もできましたし、初めは一日1,000円くらいだった売上げも、今は1~2万円に。仕入先も増えているし、開店当初の夢がかなってきた感じです。」
「いまや会計の仕事は斉藤さんしかできない」(石黒さん)と言われ、職員にも頼りにされる仕事に満足している斉藤さんですが、いずれは一般就労したいという夢も。
「将来のことを考えると、パートかアルバイトが出来たらと思っています。薬を飲みながら、病気を隠さず、理解してくれる人たちのいる職場で働きたいですね」

石黒学さん(小規模作業所「You遊」担当職員)

お客さんにもウケています!

「7人のメンバーと、職員の僕との8人で運営しています。仕事に関してはメンバーと職員の区別はないですね。時間交代でメンバーが店番をやりますし、仕入れや在庫管理、会計もメンバーがやっています。お客さん相手の仕事ですから最初は心配していましたが、メンバーは人の話をよく聞くので、お客さんのウケもいいようです。」
「店だけつくって後は・・・というわけにはいきませんから、毎日の売上げは切実な問題。開店当初から、『福祉の店』に甘えないでやろうという気持ちがありました。」

浦和生活支援センター(地域生活支援センター)

JR北浦和駅に近いマンションの一室に、仲間が欲しいメンバー達が集まっています。先輩メンバーが新入メンバーの面倒をみるなど、和気あいあいとした雰囲気のなか、旅行やレジャーなど楽しい計画がメンバー主体で進められています。
「やどかりの里」に登録する前の人も来所しやすいように、との思いから足の便のよい駅前に立地しており、「今後は自宅から精神科クリニックに通っている人にも利用してもらえたら」(白石さん)とのこと。

白石直己さん(浦和生活支援センター・施設長)

メンバーから勇気をもらっています。

「競争社会に乗り遅れたらもう先がない、と考えてしまう僕たちに比べ、メンバーは豊かな気持ちを持っています。僕はPSWですが、“専門家”づらしていたら、メンバーに鼻で笑われてしまう。僕自身の生きている姿勢そのものがメンバーに問われます。彼らを通じて、社会の歪みを感じる度に『がんばろう』という気持ちになります。」
「障害や生きづらさを抱えていても自分の人生を捨てないで生きていく。『やどかりの里』のメンバーは皆そういう力を持っています。僕も強い人間ではないので、もし同じ経験をしていたら、ここまで生き直しができただろうかと思うと、僕自身彼らから勇気をもらっているような気がします。ここはそういう人と出会える場所。人間の生きる力って素敵だな、と素直に思えます。自分の人生は自分で作らなければならないし、見つけなければなりませんが、地域生活支援センターにはそのヒントになることがたくさんあります。」