うつ病ABC

うつ病早わかりガイドです

6.うつ病の発症から回復までの流れ

「回復に向けて」はこちらもお読みください

うつ病は診断を受けてから回復するまでに時間がかかるのが一般的で、その過程は、急性期・回復期・再発予防期の大きく3つの段階に分けられます。それぞれの期間は人によって異なりますが、ここではごく典型的な経過と目安となる期間を紹介します。

回復に向けて知っておいて欲しいことはこのコンテンツとは別に「回復に向けて」のコーナーで紹介しています。
そちらも合わせてご覧ください。

急性期(診断~3カ月程度)

うつ病の診断を受けてから、十分な休養をとりながら適切な薬物治療を開始することで、1~3カ月ほどで症状が軽快(症状が軽くなること)するのが一般的ですが、人によっては半年以上かかるケースもあります。抗うつ薬による治療は少量から様子をみながら開始し、徐々に増量して治療に必要な量を処方することになります。効果が現れるまでには時間がかかりますから、焦らないで薬物治療を継続してください。急性期は休養がなによりも大切ですので、主治医の指示に従って、できるだけストレスの原因から離れて休養に専念しましょう。

回復期(4~6カ月以上)

焦らずに治療を続けよう

回復期には、調子がよい日の翌日にまた悪化するといったように症状が波のように上下しながら一進一退を繰り返し、徐々に改善していきます。調子のよい日が続いたからといって、「もう治った!」と勝手に判断して無理をしたり、薬を止めてしまったりすると、症状が悪化して回復までに余計に時間がかかってしまうこともあります。焦ることなく薬物治療を続けましょう。
休職して治療を続けている方はある程度調子がよくなると職場復帰を焦りがちです。急性期よりもだいぶ気分が楽になって家庭でゆっくり過ごすことはできますが、職場に戻って以前のように働きはじめるには時期尚早です。少しずつ、無理のない程度に散歩をしたり図書館に行ってみたり昼間の活動量を増やしながら、生活リズムを整えていく時期です。また、うつ病になった当時のことを振り返ってみて、再発を防ぐためにはどうしたらよいか、主治医と話し合いながら社会復帰後の過ごし方について考えておきましょう。
復職にあたってはリワークプログラムなどを利用して、徐々に就業リズムに体と心を慣らしていくとよいでしょう(詳しくは「社会復帰に向けて」を参照ください)。復職してもしばらくの間は就業時間を減らしたり、負担の少ない部署に配置転換してもらったり、職場での協力は欠かせませんから、主治医と復職の相談をする際には上司にも同席してもらえることが理想です。主婦の方が家事に復帰する際にも復職と同様に段階的に少しずつ仕事量を増やすようにします。同居する家族にも協力してもらいながら、無理なくできることを少しずつこなしていくようにしましょう。

再発予防期(薬物治療:1~2年)

回復期を過ぎ、症状が安定して社会復帰を果たすことができても、まだまだ油断はできません。うつ病は再発しやすいという特徴があるため、回復期を過ぎても1~2年間は薬物治療を継続してうつ病の再発を予防しながら調子のいい状態を維持する必要があります。勝手に薬を飲むのを止めてしまうのは禁物ですが、飲み忘れにも注意が必要です。
薬を止める際には、かならず主治医の指示に従ってください。自分の判断で急に薬を飲むのを止めてしまったり薬の量を減らしてしまったりすると、めまいやふらつき、吐き気、嘔吐、倦怠感などが生じるおそれがあるからです。

そして、うつ病になってしまった原因をもう一度考え直して、環境調整を心がけましょう。また、調子が悪くなりはじめる際にどんな症状(サイン)がみられるか、家族や周囲の人たちと話し合っておくことも大切です。再発のサインは人それぞれですが、気分の落ち込みやイライラ感、不眠など、はじめにうつ病になった時の症状とほぼ同じです。自分では気づかない再発のサインが出ていた時に注意してもらえるようお願いしておくとよいでしょう。

焦らずに治療を続けよう

治りにくいケースについて

上記でみてきたのはうつ病の典型的な経過です。人によっては治療を行ってもなかなかうつ症状が改善しなかったり、いったん症状改善(症状がなくなること)したものの容易に再発してしまったりするケースがあり、「治療抵抗性うつ病」と呼ばれます。「治療抵抗性うつ病」の定義は難しいのですが、十分な量の抗うつ薬を十分な期間服用してもうつ症状がよくならないうつ病ということができます。治療抵抗性うつ病の原因はわかっていませんが、抗うつ薬に抗精神病薬を組み合わせた治療法で効果が認められています。なかなかうつ病が治らないと思っていてもあきらめず、あなたに合った治療法について主治医と相談してみましょう。