認知症ABC

認知症の症状や治療について、
わかりやすく解説します

監修:橋本 衛 先生
近畿大学医学部 精神神経科学教室
主任教授

3.専門の医療機関を受診したらどんなことをするの?

医療機関を受診すると、おおむね下記のような流れで診療が行われます。認知機能の低下にはさまざまな要因が考えられるため、さまざまな検査を行い、その結果を総合的に勘案して診断されます。

一般的な診療の流れ

一般的な診療の流れ

①問診

最初に本人やご家族からさまざまなお話を伺います。具体的には、これまでの経過や現在の生活状況、困っている症状、現在かかっている病気や飲んでいる薬のこと、これまでにかかった病気のこと(既往歴)、血縁に認知症の人がいるのか(家族歴)、学歴や職歴などをお尋ねします。認知症の症状や生活の状況は同居している家族でなければわからないものもありますので、初診時にはできるだけ家族が付き添うことが大切です。

②診察

医師が本人をよく観察して、認知機能や全身(身体・意識・運動・神経など)の状態を確認します。

③認知機能検査

記憶力や理解力を調べるために質問や検査を行います。
ミニメンタルステート検査(MMSE)や改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)などが代表的な検査です。これらはいくつかの質問に答えていく10~15分程度のテストです。苦手なことを尋ねられるため、本人にとってはストレスが強い検査です。そのため最近はタブレット端末を用いて視線の動きを捉えて認知機能を調べるようなストレスの少ない検査も登場しています。

医師の問診を受けるおばあさん

問診式の認知機能検査

白い紙に時計の絵を描いているおじいさん

時計描画など筆記による検査

タブレットやタッチパネルを用いる検査

タブレットやタッチパネルを用いる検査

ブロックを並べ替えているおじいさん

図形を組み立てる検査

画面を真剣な表情で目で追っているおばあさん

タブレット端末を見る検査

④生活活動能力、BPSD(認知症の行動・心理症状)、介護負担の評価

認知機能障害によって、これまでできていた日常生活(料理、買い物、支払、外出など)に支障を来すようになります。日常生活で苦手になっていることや困りごとがないかを、本人や家族(介護者)から具体的に聞き取ります。この聞き取りの結果を今後のケアに役立てます。BPSDは本人が気づいていないことが多いため、主に家族(介護者)への聞き取りで評価します。

⑤各種の検査

CT、MRI、脳血流検査などの脳画像検査により脳の状態を調べます。ビタミン欠乏や甲状腺機能低下症など身体の病気により脳の機能が低下している可能性がありますので、血液検査を行います。

MRIを受けるおじいさん

CTやMRIなどの検査

⑥説明・診断

検査結果の説明と診断、治療法の説明をします。
認知症と診断されることは本人や家族にとってとてもつらいことです。自分の人格を否定されたと感じたり、将来への希望を失ったり、これからどのように暮らしていけばよいのかと途方にくれたりされるかもしれません。しかしながら認知症の診断を受けても、それ以前の本人と比べ急に変わってしまうわけではありません。むしろ1日でも早く診断されれば、その分、病気の進行を抑えたり、症状を軽くしたりするための治療や今後の生活の準備を早く開始できるのです。不安なことや心配なことがあれば、主治医や医療スタッフに遠慮なく相談しましょう。