認知症ABC

認知症の症状や治療について、
わかりやすく解説します

監修:橋本 衛 先生
近畿大学医学部 精神神経科学教室
主任教授

5.制度を上手に活用しましょう

介護保険制度と介護サービス

介護保険制度は、「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み」として2000年に施行されました。65歳以上で認知症の診断を受けた方は要介護認定で介護が必要と判断された場合、いつでもサービスを受けることができます。お住まいの市区町村の役所の窓口か地域包括支援センターに相談してみましょう。

介護保険申請から認定までの流れ

1.

お住まいの市区町村の役所の窓口で要介護認定を申請します(地域包括支援センターでも申請できます)

2.

市区町村の調査員が自宅や施設などを訪問して心身の状態を確認します。

3.

市区町村は主治医に意見書を依頼します。

4.

市区町村は介護認定審査会の判定結果に基づき要介護認定を行い、申請者に通知します(申請から通知までは原則30日以内)。認定は要支援(1・2)、要介護(1〜5)および非該当に分かれます。

5.

介護(介護予防)サービスを利用するには、「要支援」の場合は地域包括支援センターに相談して「介護予防サービス計画書」を作成してもらいます。「要介護」の場合は居宅介護支援事業者に相談し、介護サービス計画書(ケアプラン)の作成を依頼します。居宅介護事業者に所属する介護支援専門員(ケアマネジャー)は、本人や家族と相談しながら、希望や心身の状態に合ったケアプランを作成します。

6.

介護サービスの利用開始

利用できるサービスには、自宅で受けられるものや、施設に通所・生活して受けられるものなど、さまざまなものがあります。利用を希望するサービスがあれば、ケアマネジャーに相談しましょう。

その他の制度

クーリング・オフ制度

いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を考え直したり、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。訪問販売や電話勧誘販売などで商品を購入した場合、契約書を受け取ってから8日間はクーリング・オフの対象となります。ただし、健康食品や化粧品などの消耗品や、現金取引の場合で総額3000円未満の場合にはクーリング・オフの規定が適用されないため、注意が必要です。詳しくは下記にご相談ください。
独立行政法人 国民生活センター 消費者ホットライン 全国共通の電話番号188
お住まいの市区町村の消費生活センター、消費生活相談窓口

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業は、社会福祉協議会が実施している事業です。介護保険などの福祉サービスを利用する際のさまざまな手続きや契約、預金の出し入れ、生活に必要な利用料などの支払い手続きや、年金や預金通帳など大切な書類の管理などに困っている方をお手伝いします。日常生活自立支援事業のサービスを利用する際には、利用する方と一緒に支援計画をつくり、契約をします。また、支援計画に沿って定期的に訪問し生活状況を見守ります。利用を希望する場合にはお住いの地域の社会福祉協議会に連絡します。相談や支援計画の作成にかかる費用は無料で、福祉サービスの利用手続きや金銭管理などのサービスを利用する際には料金がかかります。
この事業は本人がこのサービスを利用する意思があり、契約内容がある程度理解できる方と社会福祉協議会が対等な立場で契約するものです。本人が社会福祉協議会と契約できるだけの判断能力がなくなった場合には、成年後見制度を利用してください。

成年後見制度

判断能力が低下した方を保護・支援する制度で、「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。「任意後見制度」は将来に備えて十分な判断能力のあるうちに自分で代理人を選んでおき、自分の生活や療養看護、財産管理に関する事務を依頼するものです。「法定後見制度」は、認知症などですでに判断能力が低下している方を保護するために、家庭裁判所で選ばれた成年後見人が本人の利益を考えながら、本人に代わって契約などの法律行為を行ったり、本人自ら法律行為を行うときに同意を与えたり、本人が同意なしに行った不利益な法律行為(不要な高額商品の購入や不動産売買契約など)を取り消したりすることができます。詳しくは、法務省作成のパンフレットをご参照ください。