本人が知っておくべきこと
双極性障害治療の主人公である本人が知っておくべきことについてまとめました。
双極性障害は治療せずに放置すると、多くの場合、再発してしまいます。何度も再発を繰り返していると、あなたの社会的信用や家族、仕事や財産などを失ってしまう可能性があります。でも、薬をきちんと飲み続け、規則正しい生活リズムを維持することで、普通の生活を送ることができますので、過度に心配することはありません。双極性障害について正しい知識を身につけて、治療につとめましょう。
ここでは、回復に向けて双極性障害治療の主人公である本人が知っておくべきことについてまとめました。
監修:加藤 忠史 先生
順天堂大学医学部精神医学講座
主任教授
1.再発を防ぐために
薬を飲み続けましょう
双極性障害の治療には薬物治療と心理社会的治療がありますが、基本となるのは薬物治療です。さらに心理社会的治療と組み合わせると効果的です。
病気の症状が落ち着いてきて「もう大丈夫」と思っても、薬を飲むのを止めてしまったり、飲む量を自己判断で変えてしまったりすると、再発したり副作用が出たりするおそれがあります。飲み忘れにも注意しましょう。薬の副作用が気になる場合には、主治医に相談しましょう。
また、再発予防の薬を飲み忘れることが心配な方には、内服薬のほかに一度注射をすると効果が4週間続く持続性注射剤(LAI: Long-ActingInjection)という剤形が最近加わり、お薬の選択肢が増えました。
再発のサインに気づいたら
再発するときに最初にみられる変化(再発のサイン)は人によって異なりますが、いつもよりもイライラしたり、緊張したり、眠れなくなったりすることがあります。もし、「いつもと違う」と感じたら、それは再発のサインかもしれません。家族や身近な人にその旨を伝えて、すぐに受診するようにしましょう。
2.いのちを守るために
残念なことに、双極性障害で自殺を図ってしまう方は少なくありません。自殺は、残された家族や身近な人たちに、計り知れない、つらい思いをさせてしまうものです。どうしても死にたくなってしまったら、あなたのつらい気持ちを家族や身近な人たち、主治医に話してみましょう。
3.社会復帰に向けて
双極性障害は長期にわたって治療を続けなければならない病気ですが、正しい治療を続けながら職場復帰している人たちもたくさんいます。
ただし、双極性障害は生活リズムの乱れから再発を起こしやすい病気ですから、定時に出社・退社することができて負担の少ない仕事が理想的です。現実的には難しいかもしれませんが、昼夜2交代制などの不規則な勤務や夜間勤務の職業は、できれば避けたいところです。
また、復職にあたっては、仕事上のストレスや職場での人間関係のストレスが症状悪化の原因となっていることもありますので、異動や配置転換の可能性について上司とよく話し合ってみましょう。また、いきなりフルタイムで職場に戻るよりも、最初は1日数時間、週に数日程度のリハビリ勤務として、段階的に勤務時間や仕事の内容を増やしていくとよいでしょう。主治医や上司とよく相談してみましょう。