お子さんの発達が気になる方へ

指摘されたり、気になることがあったら、
まずは「発達相談の窓口」へ

育児書などで「発達の目安」を目にしたり、同じ年齢のほかの子と比べたりして、わが子の発達に心配や不安を感じたことがあるという保護者の方は少なくありません。「よその子はもうつかまり立ちができるのに…」「いつになったら言葉が出るのかしら…」など、気にし始めると心配は尽きません。でも、子どもはみんな同じ発達をするわけではなく、発達の早い子もいれば遅い子もいます。「発達の目安」に示されているのはあくまでも平均的・・・な子どもの姿に過ぎませんし、「生後●カ月までにこういう発達をしていなければならない」といったノルマでもありません。「発達の目安」に合わせることを目指すよりも、お子さんの特性に合わせた育て方を考えていくことの方が大切です。

お子さんの発達に心配や不安がある場合には一人で悩まずに、まずは自治体の発達相談窓口に気軽に相談してみましょう。ほかにも地域の発達障害者支援センターや保健センターでも相談に応じてもらえます。

早く気づいて、早目に対応

自閉スペクトラム症は、近年では子どものおよそ20~50人に1人が診断されています。わが国では幼児期からの早期支援が活発に行われる地域が増えており、支援を受けたことで、自閉スペクトラム症の特性がありながらも充実した社会生活を送っている方がたくさんいます。一方で自閉スペクトラム症の特性がごく弱い人でも、きちんと対応を受けないでいると、周囲の人と自分の違いに悩んだり、誤解されて孤立したりして、二次的な問題(二次障害)として身体症状(頭痛、腹痛、食欲不振、チックなど)、精神症状(不安、うつ、緊張、興奮しやすさなど)、不登校やひきこもり、暴言・暴力、自傷行為などに悩む方がいます。

子どもの発達に気になる点がある場合には、できるだけ早目に発達相談の窓口や医療機関などに相談しましょう。早期からその子の特性に合った支援を開始することで、二次的な問題を防ぎながら発達を促すことができます。

受診の準備

1歳半と3歳のときに行われる乳幼児健康診査や就学前の秋に行われる就学時健康診断で、自閉スペクトラム症(「自閉スペクトラム症とは?」)などの発達障害や知的障害の可能性を指摘されたり、保育園・幼稚園の先生から集団行動でのトラブルや言葉の遅れなど、気になる様子を告げられたりすることがあります。

子どもの自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害については、小児科や児童精神科を受診するか、地域の療育センター発達障害者支援センターなどでも相談することができます。医療機関によっては発達障害の専門外来を設けていることがあります。ただし、発達障害を専門に診療する医療機関は数が少なく、予約を入れても診てもらえるのは数カ月先というのが一般的です。不安な気持ちのまま何カ月も受診を待つのはつらいものです。まずはかかりつけ医や自治体の発達相談窓口、療育機関に連絡し、普段の生活での悩みや課題について相談して、できる取り組みから開始しておくと良いでしょう。

受診の際には、母子手帳や生育歴・病歴のメモ、育児日記、学齢児であれば学校の通知表などの資料を持参すると、お子さんのそれまでの成長を理解してもらう助けになります。

はじめての診察〜診断

診察では、「問診」「面接・行動観察」「検査」を行います。はじめての診察は1~2時間ほどかかるのが一般的です。

問診

医師は子どもの出生時から現在までの成長の様子、日常の過ごし方や困っていることなどについて、持参した母子手帳やメモなどの資料を参考に保護者に聞き取りします。

面接・行動観察

質問に答えられる子どもには面接を行います。面接できない場合は、スタッフと遊ぶ様子などを通じて、特に名前を呼んだときの反応、言葉の発達の具合、視線を合わせるかどうかなど、子どもの行動を観察します。

検査

心理士による心理検査、発達検査、知能検査などを実施します。必要に応じて脳波検査や血液検査などの医学的検査も実施します。

また、自閉スペクトラム症はほかの発達障害(注意欠如・多動症や限局性学習症など)や睡眠障害、てんかんなどが併存しやすいことが知られています(「自閉スペクトラム症に併存しやすい疾患・障害」)。医師はこれらの障害の有無についても確認し、対応を検討します。

ただし、たった一度の診察では総合的な子どもの状況を判断しきれず、繰り返し経過を観察する必要のある場合があります。この場合、診断までには数カ月以上かかることもあり、その間に療育(治療教育)を受けるよう勧められることがあります。

はじめての診察〜診断

診断を受け止め、今後の見通しを立てよう

お子さんが自閉スペクトラム症の指摘を受けた保護者の多くは、これまでの育児を振り返って思い当たることがある一方で、「何かの間違いだ」「いずれ他の子に成長が追いつくはず」と認めたくない気持ちもあり、複雑な心境です。

自閉スペクトラム症の子どもには支援が必要です。お子さんの特性を十分理解して、得意なことを伸ばし、苦手なことを補うことで生活上の支障は少なくなります。ただし、支援によって自閉スペクトラム症の特徴が目立たなくなってきても、完全にゼロになることはありません。誤った見通しや期待をもつと、後で本人も家族も苦しむことになります。

お子さんが今後、どのような人生を歩んでいくのか、主治医や支援者と相談し、長期的な見通しを立てましょう。専門家の協力を得て、見通しに基づいた支援計画を作成・実行します。その結果、子どもがどのように変わったのか評価・検証し、次の支援計画を立てる、という一連のプロセスを繰り返しながら、子どもに必要な支援を探っていきます。

診断することの意義

支援のための診断
適切に自閉スペクトラム症を診断・評価することで、その子にとってものごとがどのように見えているのか、どのような学びのスタイルをもっているのかを明らかにします。それにより、その子に合った療育方法や進路を考えたり、将来の見通しを立てたりする上で重要な手がかりとなります。

公的・福祉サービスを受けるための診断
医療費助成や手帳(療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)の取得、福祉施設の利用など、公的・福祉サービスを受ける際に診断が必要となる場合があります。