01
認知症の方に寄り添い、一緒に行動の背景を探りましょう
このような行為を受けると、とてもつらく悲しい気持ちになり、どう向き合ったらよいかわからなくなることもあるでしょう。そのようなとき、会話を通じて認知症の方の気持ちに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。認知症に伴う症状を引き起こすきっかけが見つかるかもしれません。
たとえば、このような攻撃的な行動が食事の際に何度も起こる場合は、食事の量や献立、介助の仕方、食卓の周囲の環境などが影響している可能性があります。「今日のご飯は〇〇ですよ。お腹は空いていますか?」「ご飯の量はどうですか?」「もっとゆっくり食べますか?」など、優しく声をかけて気持ちを探ってみてください。また、「いつ、その症状が起こったか」「誰といるときに、その症状が起こったか」「どこで、その症状が起こったか」など、状況を振り返ってみることで行動のきっかけがわかる場合もあります。こちらに示した例では、「自分のペースで食べることができず、子ども扱いされているように感じている」ことが、行動の背景にありました。
ただし、行動の背景は一人ひとり異なります。自分の思いが伝わらないことによるストレスや孤独・不安、周りの環境に対するいらだち、体の不調による不快感など、行動の背景にはさまざまな気持ちが潜んでいます。ここに挙げた食卓での出来事は一例に過ぎず、その理由や対処方法は一様ではありません。認知症の方に寄り添い、ご本人の状況や気持ちを理解し、それに応じた個別の対応をとることが症状を改善するうえで大切です。
02
気持ちを無視した
一方的な行為は控えましょう
叩くなどの行為は興奮に伴ってあらわれる場合があります。興奮している状態は認知症の方にとっても気分がよくありませんので、まずは気持ちを落ち着かせる必要があります。そのようなときに、叩くのをやめさせようとして無理におさえたり、部屋に閉じ込めるようなことは認知症の方の孤独や不安を強めてしまいます。認知症の方の気持ちを無視した一方的な行為はせず、やさしい口調で話しかけたり、好きなものの話題に触れたりして、気持ちを落ち着かせ、穏やかに過ごしてもらうことが大切です。その際、唐突に関係のない話題を切り出すのではなく、まずは認知症の方の話を聞きながら、会話の流れの中で興味があることに徐々に話を向けていくなど、自然な流れの中で認知症の方の気持ちをほぐしていくとよいでしょう。
03
常に完璧な介護は困難です。周りのサポートも受けましょう
叩くなどの行為にあった際、認知症の方の気持ちを受け止めることが大切ですが、時に行き場のない怒りやいらだちを感じることもあるかもしれません。大切な家族の介護を続ける中では、いつも完璧な介護を行うことは困難であり、常に優しく接することができるわけではありません。対応が難しいと感じたら、落ち着くまでいったんその場を離れて見守ることも検討しましょう。その際は、「ちょっと用事があるので少し離れるね」と声をかけたり、別の家族に対応をお願いしてから離れるなどの配慮が必要です。また、家族会、デイサービスや訪問介護などの地域の支援、主治医やケアマネージャーなどの専門家を含む周りのサポートを受けることも重要です。
こちらにご紹介した症状および対処法は一例であり、すべての認知症の方に当てはまるわけではありません。個別の状況に応じた対処法は異なりますので、このような症状でお困りの方は、ぜひ主治医に相談してください。
主治医に相談する際のポイントをまとめた、こちらの「相談シート」をぜひ活用してください。