私の体験談
生きがい、私の居場所について
「心の闇に一筋の光が」
平成四年二月、青天の霹靂の中、東京都K市にあるM病院に息子が入院しました。体験した事も想像すらした事もない分野の出来事に途方にくれましたが、取り合えず入院した事でホッとし、その夜、久々にゆっくりと風呂に入り、ぐっすり寝たことを憶えております。
息子の発病は、本人の未来だけでなく、私達夫婦の未来をも喪失した思いで、心に深い闇を持ちながら病院へ通っておりました。ある日、担当医から「病院で家族教室が開催されているので出てみて下さい」と誘われ、その夜、会議室に出かけてみました。大勢の家族や看護師等が、医師の配布した資料に基づき、「家庭における生活の有り方」について、わかりやすく熱心に二時間以上も説明し、質疑応答にも応じてくれました。初めての機会に、妻と共に貪るように学びました。
以後、定期的に家族教室が開催され、病院内外の先生が講演されて「精神障害を理解する」「福祉制度について」「社会資源の利用の仕方」等を学んで行きました。無知から生ずる心の闇に、やがて一筋の光が差し込み、かすかな望みが見えはじめた時は、自分が救われる為、図書館や書店で関係書を読んだり、医師や関係者に話を聞いたりと、あらゆる機会を作って学びました。
すこしずつ精神医療保健福祉がわかりはじめた今では、いつの間にか、この病気に対する偏見も消えて、息子の生き方も理解出来、私達夫婦の生活もしっかり取り戻す事が出来ました。全家連の相談室長Yさんが「知識は自分を支える力である」と語っておりましたが、全くそのとおりで、色々学んだ事と障害を持つ家族がいるのを隠さなかった事が良かったのではないかと、今考えております。
秋田県 藤原慶吾(家族)
※
全家連(全国精神障害者家族会連合会)は2007年4月に解散しましたが、この「私の体験談」では原稿執筆時を考慮してそのままの記載にしております。