回復を促す家族の接し方

病気の段階ごとに対応のポイントをまとめましたので、参考になさってみてください。

統合失調症の回復のためには、ご家族の協力が大きな助けになります。 病気を発症された当初は、ご家族も動揺したり混乱されることがあると思いますが、そんな皆様のために、病気の段階ごとに対応のポイントをまとめましたので、参考になさってみてください。

監修:白石弘巳 先生
埼玉県済生会なでしこメンタルクリニック院長
東洋大学名誉教授

参考ページ:家族の支援ガイド 5.家族の対応ABCはこちら

1.はじめに知っておいていただきたいこと

病気になったのはだれのせいでもありません

統合失調症は、約100人に1人がなる可能性のある身近な病気で、脳内の情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれて起こります。本人がなにかをしたから発症したわけではなく、親の育て方や遺伝のために起こるわけでもありません。ご家族がご自身を責めたり、本人の将来を悲観したりする必要はありません。

「家族は味方」というメッセージを送りましょう

統合失調症を発症した人は、今までに体験したことのない不安を感じています。幻覚(幻聴など)や妄想により周囲への不信感が増し、閉じこもりになりがちですから、まずご家族が「私たちはあなたの味方」というメッセージを送ってあげることが大切です。

回復に向けたイメージをもって接しましょう

家族の理解と接し方が治療の進み方に大きな影響を与えます。病気の症状や正しい治療法を理解し、回復に向けたイメージをもちましょう。病気の見通しや最善の効果をあげる方法を知ることで、安心とゆとりが生まれます。回復に向けたイメージをもつことは、本人にとっても大切なことです。

相互理解と信頼が何より大切

幻聴や妄想など、回復を妨げている症状をできるだけ取り除くことが本人の悩みや苦しみを減らすことになります。まずはさまざまな症状に苦しむ気持ちに寄り添いましょう。そして苦しみを取り除く治療方法があることをわかりやすく、やさしく説明しましょう。

薬物療法と非薬物療法を組み合わせて

統合失調症の治療は抗精神病薬による薬物療法が欠かせません。しかし、薬物療法だけでは幻覚や妄想などの症状が完全には消えなかったり、病気による生活のしづらさが残ったりすることが少なくありません。そのため、統合失調症の治療は、薬物療法に加え、社会生活する上で必要な日常生活や対人関係に関する技術の向上、就職に必要なスキルの開発など、生活のしづらさを改善して社会参加を促す「精神科リハビリテーション」を組み合わせるとより高い効果が期待できます。

主治医とのコミュニケーションが治療効果に反映

統合失調症は長い経過の慢性疾患ですので、医師-本人-家族の連携が欠かせません。医師は症状と薬の効果・副作用、日常生活の中での不安や困りごとなど、さまざまな情報を元に治療を調整しています。気になることがあればなんでも主治医に伝えましょう。言いたいことや聞きたいことをメモにまとめておくと良いでしょう。

多くの専門スタッフが協力して治療を進めます

医療機関では、医師や看護師だけでなく、精神科ソーシャルワーカー(PSW)、作業療法士、臨床心理士、薬剤師や栄養士など、多くの専門スタッフが働いています。より良い効果を得るために、これらのスタッフが本人の希望を確かめながらチームで治療を進めていきます。

2.回復を促す接し方「10」のコツ

統合失調症の治療にとって家庭環境(家族の接し方)は重要なポイントになります。ご家族は患者さんにとって頼れる大切な存在ですが、接し方によっては本人にストレスを与え、再発のリスクを高めてしまう可能性もあります。本人と適切な距離をとること、治療に適した穏やかな家庭環境をつくることを心がけましょう。

1. 話を最後までよく聞く

話を途中で遮らずじっくりと本人の話に耳を傾ける

話のつじつまが合わなくても、その真意を理解するように努める

うなずきや本人の言葉をくり返して、話を引き出す(なかなか話せない人の場合)

2. 伝えるときははっきりと簡潔に、わかりやすく

あいまいな言い方は避け、はっきりとわかりやすく話す

一度にたくさんのことを言わない

注意するときは、その内容・理由に加え、どうしてほしいかを短く具体的に伝える

3. 子ども扱いしない

「どうせ言ってもわからない」と決めつけない

子ども扱いせず、本人のプライドを尊重する

保護することと自立心を育てることのバランスを考える

4. 対立や言い合いを避ける

本人と一緒に興奮したり、議論したりしない

対立しそうになったら家族が一歩退く

本人の気持ちが落ち着くまであたたかく包むように接する

5. できたことをほめる/感謝する

やったことの良い点をほめ、多少のミスには目をつむる

本人ができる手伝いなどを依頼し、感謝の言葉を言う

感謝と励ましで本人のやる気を引き出す

6. 批判的になり過ぎない

病気のためにできないことを「甘え」や「わがまま」と批判したり、不満や文句を本人にぶつけたりしない

病気と本人を区別し、問題は病気であり、本人ではないことを理解する

7. あせらない/本人のペースを尊重する

回復をあせる気持ちは本人にとって大きなストレスになることを理解する

短期目標と長期目標を立てる

本人のペースで「今できること」を確実に続けさせる

たとえ時間がかかっても本人のやり方とペースを尊重し、手や口を出すことを控える

どうしても助けが必要なときだけ手を貸す

8. 本人ができることは任せる

自分でできることは自分で行うことが大切であると伝える

身の回りのことなど、自分でできることは本人に任せて手を出さない

本人と話し合って、家事や手伝いなど、役割をもたせる

9. 静かで穏やかな家庭の雰囲気を作る

本人が安心して過ごせる家庭環境を整える

本人と近すぎず、遠すぎない距離を保つ

10. 巻き込まれ過ぎない

少しのことで泣いたり、冷静さを失ったり、大げさで情緒的な反応は避ける

甘やかしたり、過保護になったりしない

極端な自己犠牲はしない

3.ステージ別 本人との向き合い方ガイド

発症期

第一目標は医療機関の受診です

いつもとちがう変わった行動をとるなど、様子がおかしいと気づいたら、すみやかに医療機関に相談してみましょう。早期に医療機関を受診して治療を開始することが早期回復につながります

診断を受けて、ご家族が混乱したり戸惑いや不安になったりするのは当然のことです

病気について正しく理解し、自分を責めないようにしましょう

本人の気持ちにやさしく寄り添い、静かで刺激の少ない家庭環境を確保しましょう

受診を説得するためのポイント

受診の必要性に関して、一貫した考えと態度で
本人になにも言わず、だまして連れて行くと家族と病院への不信感をつのらせ、治療も上手く行きません。本人の不安に耳を傾けながら、落ち着いて根気よく、やさしく説得することが大切です

本人の訴えに耳を傾ける
話のつじつまが合わない点を指摘するより、受診の必要性に絞って、繰り返し伝える

ご家族が心配していることを誠実に伝える
本人の症状とつらさを聞き取るよう努める

入院

長い目で見守りましょう

まずご家族が落ち着くことです

入院直後は環境の変化が原因で悪化する人がいますが、薬物療法の効果が出てくると徐々におさまるので、一喜一憂しないようにしましょう

見舞うときは温かく、あせらず見守る態度が大切です

できない約束はせず、約束したことは守るようにしましょう

病気のための言動に振り回されないようにしましょう

急性期に入院治療が必要な場合でも、多くの方は1~6カ月ほどで退院し、地域で暮らしながら通院治療をしています。

退院後、社会復帰

あせらず一歩一歩、再発防止

退院後は、幻覚や妄想などによる激しい興奮が落ち着いているものの、ひきこもりや意欲の低下がしばしばみられます。赤ちゃん返りや依存的になったり、身の回りに無頓着になったりする場合もあります。生活能力やコミュニケーション能力が落ちているのは病気のためですので、あせらず長い目で見守りましょう

本人が自分の力で生活できるように、できることから始めるように励ましていきましょう。また、できないところを補いつつ温かく見守りましょう

本人に回復のプロセスを説明し、生活の目標について話し合いましょう

薬の継続的な服用の必要性を説明し、再発予防に努めましょう

あまり深刻に考えず、ほどほどの距離をとって、お互いに息抜きをする時間をもつことも大切です。ご家族が共倒れにならないよう、支援サービスを上手く利用しましょう

自宅療養のポイント

【コラム】 統合失調症治療で目指す「回復」とは

統合失調症は急性期の症状がおさまってからも再発を防ぐために長期にわたって薬物治療を続ける必要があります。病気になる以前とまったく同じ状態に戻ることを目標にするのではなく、あせらずできることから一つずつ生活の中の課題を克服して「新しいゴール」を見つけることが大切です。

リハビリテーションの目標

社会復帰に向けて、次のような目標をもってリハビリテーション(リハビリ)をはじめてみましょう。

人とのかかわり

家族以外のさまざまな人と出会い、一緒に活動することで対人関係や協調性を身につけることができます。

役割

役割を果たして人から感謝されることで充実感とやる気が出て、自信の回復につながります。

生活リズム

継続することで、療養生活で乱れがちな生活リズムを規則正しく整えることができます。

就労準備

就労に向けて、職業訓練を行ったり、職探しの方法を学んだりできるリハビリがあります。

居場所

自宅や病院の他にも本人が安心して過ごせる居場所ができることで生活の幅が広がります。

自分らしい暮らし

薬の作用・副作用や再発のサインなどを正しく理解したり、対人関係のコツや生活の仕方などを学んだりすることで、病気があっても自分らしく暮らす方法を身につけます。

4.再発を見逃さない

統合失調症は再発しやすい病気です

発病初期の5 ~ 10年間は特に再発のリスクが高い傾向にあります。再発を繰り返すと症状が重くなり、回復も困難になっていきます。再発の兆候(サイン)は人それぞれ違いますが、再発するときはいつも同じパターンで始まることが多いといわれています。よくあるパターンとしては、「眠れなくなる」「イライラがひどくなる」「音に敏感になる」などがあげられます。こうした「いつもと違う」様子が現れたら再発の可能性を疑って、すぐに受診させるようにしましょう。再発初期であれば薬の調整や生活上のアドバイスで入院せずに切り抜けられることもあります。ご家族や周りの方のサポートは再発防止の大きな力となります。

家族がわかる再発のサイン(例)

1.

眠れない日が続くようになる

2.

イライラしている

3.

音に敏感になる

4.

食欲が落ちている

5.

焦りや不安の訴えが多くなる

6.

発病時の体験を昨日のことように語るようになる

7.

そわそわして、落ち着きがなくなる

8.

ぼーっと考え込んだりする

9.

被害的で、疑い深くなる

10.

急に行動的になり、周囲の意見に耳を貸さなくなる

すまいるナビゲーターには、毎日の体調や服薬をチェックできる「すまいるカレンダー」を掲載しています。ぜひご活用ください。

5.服薬について

薬が飲めない理由

服薬は本人が自己管理するのが理想ですが、上手くいかないこともあります。薬が飲めない場合には、次のような理由が考えられます。対処法について主治医に相談してみましょう。

薬をきちんと飲めない理由

うっかり飲み忘れてしまう

副作用が気になって飲みたくない

本人に「病気」という自覚がなく、飲む意思がない

薬の種類や数、飲む回数が多く、飲むのが負担になっている

服薬を続けるための工夫と相談

本人が治療について納得して服薬を継続できるよう、ご家族の協力と工夫が大切です。次のような工夫や相談をしてみましょう。

家庭でできる工夫

家族がみているところで飲む

声掛けをする

服薬カレンダーや薬ケースなどを使う

薬の副作用がないか、本人に聞いてみる

病院で相談

副作用があることを伝え、副作用を少なくする方法について相談する

服薬の必要性について再度、説明してもらう

服薬の負担*について相談する

同じ成分の薬でも、剤形によって服薬方法や飲み(使い)心地、服薬回数などが異なります。水で飲む錠剤や散剤、水なしで飲める内用液や口腔内崩壊錠、2~4週間に1度注射する持続性注射剤(LAI) などがあります。本人に合う薬について主治医に相談しましょう。

6.ご家族だけで抱え込まないために

ご家族がゆとりをもった生活を

ご家族のサポートは統合失調症の治療において大きな力となります。でも、時間やエネルギーのすべてを本人のために使い果たしてしまうと、ゆとりがなくなって両親の関係がぎくしゃくしたり、他のきょうだいが親から放っておかれていると感じて情緒的に不安定になったりすることが知られています。そのような家庭環境は本人の回復にも悪影響を与えてしまいます。「家族の問題だから…」と自分たちだけで解決しようと無理をしないでください。ご家族を支えるためのさまざまな社会制度や支援してくれる人のネットワークがあります。積極的に周囲に支援を求めて、ご家族が自分自身の心身の健康を守り、ゆとりをもって本人をサポートするよう心がけましょう。

家族がゆとりをもつために

自分自身の心身の健康を守りましょう

ときには自分だけの時間をもったり、趣味を楽しんだりしましょう

友人に会うなど、人間関係を広くしましょう

困ったことや悩みごとを相談できる相手を見つけましょう

地域の援助サービスや支援窓口を積極的に活用しましょう

困ったときに支援してくれるネットワークづくり

地域で暮らしながら療養するカギは、地域の専門スタッフや相談窓口、家族会など、支援してくれるさまざまな人とのつながりをつくって、上手に力を借りることにあります。困ったことやわからないことがあれば、その都度気軽に相談して、ネットワークを広げていくようにしましょう。

相談に応じてくれる専門スタッフ

病院の主治医や精神科ソーシャルワーカー(PSW) のほか、地域の相談窓口(市町村の障害者福祉の担当課、保健所・保健センター、精神保健福祉センターなど)が相談に乗ってくれます。

特に精神科ソーシャルワーカーは精神科の患者さん専門の福祉職で、年金などの経済的な問題や、社会復帰、地域生活など、日常生活で直面するさまざまな問題について相談を受け、助言・指導・援助をおこないます。

病気や対応法についての理解を深める

ご家族の不安や負担を軽くし療養をサポートしていく上で、病気や対応法についての正しい理解は欠かせません。病院や地域で開かれている「家族教室」では、統合失調症の症状や治療法、今後の見通し、本人への接し方などについて専門家からじっくり話を聞いて学ぶことができます。また、他の家族の体験談を聞くことで、不安や悩みを軽くするのに役立ちます。できるだけ参加しましょう。

家族会に参加してみましょう

家族会は、統合失調症など、精神疾患のある患者さんを抱える家族が互いに悩みを分かち合い、励まし合う集まりです。全国各地(病院・地域)に約1,200の家族会があります。悩んでいるのは自分一人ではないことがわかって気分が楽になったり、話をすることで気持ちの整理ができたり、ときに思いがけない発見や反省すべき事柄もあるかもしれません。ご家族が病気の治療に最も必要な心の安定を保つためにも、ぜひお住いの地域の家族会に参加してみてください。

みんなねっと(公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会)

精神に障がいのある方の家族が結成した団体です。全国の家族と家族会をつなぎ、精神障がいのある本人と家族が安心して暮らせる社会をめざして支援を行っています。電話相談も行っています。

http://seishinhoken.jp/

COMHBO(コンボ)(特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構)

精神障がいをもつ人たちやその家族などが主体的に生きていくことができる社会作りを目指している団体です。精神疾患をかかえるご本人向けの初めての情報誌、メンタルヘルスマガジン「こころの元気+plus」を発行しています。

https://www.comhbo.net/

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「すまいるナビゲーター」のコンテンツをまとめた、統合失調症ブックレットシリーズ(No.1~No.5)のPDFと各ブックレットの解説用パワーポイントファイルを掲載しています。ダウンロードしてお使いください。