ここちいい生き方がある

社団法人『やどかりの里』(埼玉県さいたま市)

2.学習会・退院促進プロジェクト

当事者自身が社会情勢を学ぼう!

「やどかりの里」では「精神障がい者も社会情勢を勉強し、社会に対して発言する力をつけよう」との趣旨で、メンバーが自主的に学習する集まりを開いています。「こんばんは!」夕方、開始時間が近づきメンバーが集まるとにわかに会場は活気づきます。
メンバーの間には職員の姿も。我々取材班の飛び入り参加もOK。皆さん笑顔であいさつしてくれました。
この日は、厚生労働省内の委員会を傍聴したメンバーと職員が報告を行いました。
司会役の香野英勇さんもメンバーの一人。互いの立場や辛さを理解しあえる仲間同士の本音の議論は活発です。
「精神障がい者には厳しい情勢になりつつある昨今だが、国に当事者の声を届ける活動を続けていこう」「安心して暮らせる場があれば精神障がい者は地域で暮らせることを、長期入院している仲間たちに知らせてあげたい」・・・
「やどかりの里」メンバーのポジティブなエネルギーをかいま見ることができました。

「やどかりの里」のメンバーは、職員とともに活動のあり方を振り返り、問題提起をしています。精神障がい者の地域での生活をよりよくするために、当事者自らが社会の状況を学び、きちんと発言できる力をつけていくことがメンバーの目標です。発病前の自分に戻るのではなく、病を得たからこそ築くことができる人生を創ろうメンバーの菅原さんが提唱されたという“生き直し”ができたメンバーの表情が、いきいきとしているのがとても印象的でした。

香野英勇さん

多くの精神障がい者につたえたい

「やどかりの里」の理事にしてメンバー。学習会では司会進行役として、皆が議論に参加し活発な話し合いができるようリードしていた香野さん。「当事者が発言することができれば、障害者が情報を共有できます。学習会はオープンですから、当事者が外部の人たちと接する機会にもなります。」香野さんは現在、福祉工場『やどかり情報館』で働いています。自分が求められているからこそ、一般就労よりも福祉工場で働く道を自ら選択しています。「僕らには『やどかりの里』という安心できる場所があるから幸せです。こうした活動をもっと多くの精神障がい者に広げて行かなくては、と思っています」。

体験談を語るのは、自分を肯定すること

「やどかりの里」のメンバーは「精神障害をもっと多くの人に知ってもらうため、自分達の体験や意見を社会に発言していこう」と、講演活動を積極的に行っています。
辛い思い出であっても「自分の体験を語ることは、自分の人生を肯定することになる」(香野さん)との狙いも。
この「学習会」はもともと、講演活動をめざす当事者がスピーチの腕を磨く場としてスタートしました。
メンバーが持ち回りでスピーチを行い、感想や、アドバイスを述べ合います。話し手もメンバーなら、批評するのもメンバー。
この日は吉江まさみさんの体験談が披露されました。
「恐ろしい、こわい、気持ち悪い・・・と言われたけれど、私はたまたま精神障害になっただけ。普通の人と何も変わらないんです」(吉江さん)。辛い思い出に思わず涙の場面もありましたが、最後は「私の話を聞いてくれた人に“元気になった”と言われると、自分も頑張ろうと思う」と前向きなコメントで締めくくりました。

「やどかりの里」のメンバーは、職員とともに活動のあり方を振り返り、問題提起をしています。精神障がい者の地域での生活をよりよくするために、当事者自らが社会の状況を学び、きちんと発言できる力をつけていくことがメンバーの目標です。発病前の自分に戻るのではなく、病を得たからこそ築くことができる人生を創ろう???メンバーの菅原さんが提唱されたという“生き直し”ができたメンバーの表情が、いきいきとしているのがとても印象的でした。

吉末俊一さん

俺、内職仕事は苦手なんだ(笑)

「末吉さん、話は1分にまとめてくれよ(笑)。」他のメンバーに冷やかされながらも、大きな声で堂々と発言していた末吉さん。
「内職仕事は苦手。『やどかりの里』で『喫茶ルポーズ』(作業所)を見学して、『こんな作業所があるのなら、自分もやっていけるかも』と思ったんだよね。」 地元の合唱団にも参加し、自分なりの社会復帰を着実に進めています。

退院促進プロジェクト

退院後、スムーズに地域で生活できるよう、さいたま市内の病院関係者との情報交換や「やどかりの里」の援護寮を利用しての試験外泊を実施しています。
試験外泊を体験したメンバー・山本隆樹さんは「病院は9時消灯でしたが、試験外泊では皆と深夜まで話をしたのがとても楽しかった」。
退院後のイメージを体験できるよい機会になっています。