日本一を目指す熱き闘い(後編)
第7回全国精神障がい者バレーボール大会観戦記
5.激闘の末につかんだ栄光
いよいよ大会も佳境に入り、決勝戦を迎えた。『龍馬クラブ』が4度目の優勝の栄誉に輝くのか。それとも、『アップルボムズ』が初の栄冠を勝ち取るのか?。
第1セットは『龍馬クラブ』が終始、試合をリードする。序盤は一進一退の攻防が続いたが、中盤から長身のアタッカーから繰り出される打点の高いスパイクが決まると、『龍馬クラブ』が次第にリズムをつかんでいく。『アップルボムズ』も拾ってつなげるバレーで粘りを見せるが、第1セットは25対16で『龍馬クラブ』が先取した。『アップルボムズ』の応援席からは、「やっぱり『龍馬クラブ』は強い…」とのため息混じりの声が漏れ聞こえてきた。
そして運命の第3セット。第2セットで巻き返し勢いに乗る『アップルボムズ』に対し、『龍馬クラブ』には明らかに焦りの色がにじんでいた。インターバルの円陣で『龍馬クラブ』の一柳信幸監督の檄が飛ぶ。「ここまできたら下手な小細工はするな。悔いのないよう自分たちのバレーをしよう!」。この言葉で平静さを取り戻したのか、第3セットは『龍馬クラブ』本来のリズムが戻ってきた。3人の長身アタッカーを繰り出して、スパイクを決める正攻法が次々と決まる。『アップルボムズ』も健闘したが、結果は15対9で見事、『龍馬クラブ』が制し、4度目の栄冠に輝いた。
一柳信幸氏(高知県『龍馬クラブ』監督)
苦しい戦いを強いられましたが、優勝できてホッとしています。選手の頑張りはもちろんですが、チームを支えてくれたスタッフ、それから協力を惜しまずにサポートしてくれた地域のボランティアの力添えなくしてはここまでこれなかったと思います。高知県は一般も学生もバレーが弱い県ですが、精神障害の分野では胸を張ることができる。これは私たちの誇りです。
今回、『龍馬クラブ』は決して圧倒的な強さで優勝をものにしたわけではない。しかし、4度の優勝は単なる勝負運だけで掴みとれるものではないだろう。そこには、それを可能にするだけのチーム運営があり、一柳監督はそれを地域の総合力と分析する。地域のさまざまなサポートを得ながらチーム一丸となって1つの目標を目指すことができるチーム運営、環境こそが強さの秘訣なのかもしれない。2日間の激闘を戦い抜いた、『龍馬クラブ』のメンバー、監督・スタッフの表情には、疲労と安堵に混じって、地域クラブとして4度の栄冠に輝いた誇りを見ることができた。